f:id:murakoshi5:20181114224640j:plain近年、充実した共用施設、サービスを売りにしているマンションが増え、人気を博しています。戸建てではなくマンションを検討する人にとって、いっけん見栄え良く楽しそうで心惹かれますが、果たして本当に必要なのでしょうか。

充実した共用施設は私たちの生活に必要か

結論から言うと、充実した共用施設、サービスは、大規模ならでは一住戸当たり低コスト負担で豊かな生活を提供してくれる事から、必要であると考えます。それが、1戸建てでなくマンション、特に大規模マンションを選ぶ中枢の価値でもあるからです。

ただし、煌びやかな共用施設ありきでマンションに惹かれ購入を決めてしまう前に、冷静に考えるべきことがあります。それは、住人にコスト負担が課されることなので、入居後に生活を始めてから自分のライフスタイルに本当に必要であるのか、マンションに隣接して同じサービスを受けられる民間や公共の施設が存在しないかを吟味すること。

同時に、大規模マンションであっても、楽しそうな共用施設の前に、毎日生活を送る住戸の快適な住環境を見落とさないように地に足をつけた住まい選びをすることの基本も忘れてはいけないことです。

そもそも、もし共用施設が必要でなければ、大規模マンションでなくとも住環境が良いマンションを選ぶ選択肢が増えるかもしれません。

以下、2つの大規模マンションを例にとった、共用施設、サービスの一覧です。

「マンションA」は今流行の共用施設はほとんど見当たりません。「マンションB」は、充実した数々の共用施設を持っています。明らかに楽しそうなマンションライフを送れるだろうと想像が膨らみますね。

日々のランニングコスト

まずコスト面から。共用施設は、マンション住人の管理費負担で運営されており、月々の管理費に含まれて徴収されます。修繕積立金の考え方もしかりです。修繕積立金は、年数が立ち、施設、設備が老朽化していく実態を踏まえ、数年ごとに引き上げていく運営スタイルをとっているマンションがほとんどです。

管理費

70㎡換算で比較すると以下となります。

マンションA
13,268円(インターネット代など含む)
マンションB
16,450円(インターネット代など含む)

マンションの管理費は年々高騰しており、2017年度首都圏平均は16,848円となっています(東京カンテイ調べ)。都心や駅近、そしてこれだけの充実した共用施設があることを加味すると、Bは十分にリーズナブルなのですが、同じく駅近物件であるAは、共用施設を極力削った上で大規模のメリットを大きく活かした月々の低ランニングコストが目を見張ります。界隈の新築中小型マンションでは、同じく70㎡換算で月々2万円を超える管理費を徴収するマンションもありました。

管理費負担の中身一例を見ると、Bの「ライブラリー」は、本の入れ替えを順次行っていくそうですが、住人の管理費より年間約20万円を大手ブックストアに委託料として支払う形になるようです。1世帯あたりの年間負担額は数百円ほどです。

修繕積立金

Aが4,280円、Bが8,500円です(修繕積立金が上がる築5年まで。それ以降は上記表参照)。Bの内訳として、「全体共用費」2,000円という項目があり、この中に共用施設の数々が含まれています。それら共用施設に充てられる費用は全てではないにしても半額の1,000円と仮定しておきます。通常、個別住戸に充てられる空間を、代わりに全員が利用する数多くの共用施設に割り当てているいるわけで、その建物部分など修繕費を住人全員で積み立てていくので通常の修繕積立金よりも割高になるのが実態です。

以上を踏まえると、BがAよりも充実した共用施設を提供するため、管理費で3,000円、修繕積立金で1,000円、合計月々4,000円ほどのランニングコスト増につながっていると仮定することができます。修繕積立金は5年ごとに段階的に引き上げられていくので、年を経るごとに更に負担額は増します。

月々4,000円で、棟内でこれだけの充実したサービスを受けられるのは、大規模マンションと大手デベロッパー企画力ならではの魅力であり、豊かなマンションライフが送れる付加価値の1つとして、人気を博している理由だと思います。

ただし、ゲストルーム、カフェスペースのドリンクなどのサービスは、ランニングコストに加えて使用料も発生します。使用頻度や、マンション周辺の民間や公共施設の有無次第では、本当に自分にとって必要なのか考えてみてもよいでしょう。

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サービスの必要性、使用頻度

「TSUTAYAとコラボの共用施設!?」を売りにするマンションも出てきました。華やかで素敵なマンション!と思えてしまうのですが、いったん冷静に考えてみたいと思います。

例えば、ゲストルームって、初めてマンションを購入する人にとっては魅力的に映りますが、本当に使用するでしょうか。私も、最初にマンションを購入して両親が遊びに来た際は、何度か泊まっていった記憶がありますが、両親も年を重ね、この数年は1度も泊まりに来たことがありません。友人もです。ゲストルームが2.3室あっても、大規模マンションでは、土日に予約が集中し、希望日に中々取れない実態もあります。

屋上テラス。私は正直、夏も冬も春も秋もほとんど使用しませんでした。屋上にあるので、結局夏はカンカン照り、春や秋でも高い場所なので風が強かったり、冬なんかとてもじゃないけど・・・。で、昇っても結局やることないわけです、屋上なんて。こちらも当然、補修費や管理負担があります。

一方、自宅で仕事や勉強をする人であれば、ライブラリー、スタディルームなどは、重宝すると思います。子供がいる家庭だと、騒がしくて自分の作業をゆっくりできないですから。棟内にサードプレイス的な居場所があるということは、梅雨の時期、自宅にいられない時なども、とても助かると思います。

土日休みの人だと、共用施設、サービスがいっぱいで使用できないことがあるかもしれません。現マンションのシェアサイクルは土日朝借りに行くと埋まっている事が多いのですが、平日使用したい時は大体借りられます。先日訪問した大規模物件モデルルームの営業さんが、「土日だと混んで使えない共用施設があるかもしれませんが、平日ででしたら優先的にいつでも使えますよ!」と言っていました。

どこまで想像できるかですけど、人それぞれ、入居してからマンションを巡る生活のシーンをよく考えたいですね。マンションを検討している時、大手ブランドのマーケティングに憧れの思いで乗ってしまう前に、自分自身のライフスタイルと、共用施設サービスの関連性を少し冷静に考えてみましょう。

物件に隣接した生活利便施設

以下、「A」「B」の物件それぞれの隣接地(徒歩3分以内)に、どんなサービス施設があるか、まとめてみました。

Aは、徒歩2~3分圏内に、ホテル、スポーツジム、図書館、保育園、幼稚園、カフェといった民間、公共の生活利便施設が隣接している恵まれた立地に位置するので、マンション自体に過剰な共用部を設けずに、管理をシンプルに、日々のランニングコストを削減するコンセプトがありました。隣接している利便施設を見据え、居住者にとって生活利便性の担保を取った上で低ランニングコストへの転嫁にかじを切った大規模マンションなのです。

一方、Bは、逆に、ゲストルーム、ライブラリー、ワーキングスペース、コーヒーラウンジと、これでもかといった共用施設を売りにしています。近隣は駅前含め商業施設が少なく不便なロケーションなので、通常のランニングコストに加え4,000円ばかりの負担で居住者の利便性、生活の楽しさをマンション棟内でカバーしています。

近隣が不便な立地でサービス施設が少なければ、大規模物件のメリットを活かして月々少額の負担で充実した共用施設はぜひ欲しいところです。ただし、マンションに隣接して大型ショッピングセンターがあったり、便利な商業施設が複数林立しているロケーションのマンションでは、充実した共用施設は必要ないかもしれません。将来、管理の足かせになるリスクもありますから。Aのように割り切ったコンセプトを持っても良いと思います。

周辺の立地次第では、共用施設が無くても、小規模の間取りが良い居住性豊かなマンションを選ぶ選択肢も残せます。

マンションの将来性

若い共働きの世代が華やかなマンションを購入して、充実したマンションライフを送る。今はそれでとても楽しそうに思えます。では、10年後、20年後のマンションはどうなるでしょう。

資産性、リセールバリュー

資産性、リセールバリュー、売却のしやすさを見た時に、健全に管理していくことが前提ですが、充実した共用施設はプラスに働く要素が大きいです。自分たちが購入を検討する際に良いイメージを持つのと同様、現在たくさんの共用施設を要したマンションの売れ行きが良いことからも、検討者の目には魅力的に映り、将来的にマンションが高い評価をされる傾向を作れると思うからです。街のランドマーク的な存在感を発揮し、売却のしやすさ、リセールバリューの維持でも貢献してくれることが期待できます。 

遊休資産・管理の足かせ

一方のリスクです。住人が年を重ねてきた際に、過剰な施設は、サービスの管理維持費、修繕費などマンション運営の足かせになる心配があります。極端な話、キッズルームですら、マンションが建って10年も経てば、子供が大きくなって、遊ばせている両親の姿も見かけなくなります。そうした時に、だぶついた維持費だけがかかる資産にならないか心配です。いまは、カフェやワーキングスペースなどが人々の生活スタイルの中で人気があっても、使用しなくなった施設を、柔軟に有用な施設に転嫁できるよう、住人が当事者意識を持って管理組合を機能させていくことが肝要かと思います。

見失いたくない住まいにとって大事なもの

華やかなマンションの企画に隠れて、そもそもの「住まいの価値」「暮らしやすさ」を見誤り、後になって後悔しないよう、住まい選びの基本をしっかり押さえることに徹しましょう。

華やかな大規模マンションのイメージに隠れて、明るさ、眺望、静けさ、周辺環境の住みやすさなど、そういった住宅、住み心地の基本を忘れてはいけません。一番滞在する空間は自分の住戸なのです。

周辺環境は住みやすそうですか?

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明るく住みやすい住戸内環境ですか?

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マンション内でキャンプできたり、スーパーがあったり、マンション内で楽しい生活が送れるから、駅徒歩30分でもいいや!本当ですか?

周辺環境はちょっと暗めだけど、素晴らしいラウンジやブックスペースがあって、日々楽しそうだからいいや!本当ですか?

駅から遠いマンションが悪いわけではなく、最初の住まい選びの基本で、駅から遠いマンションが本当に自分に合った上で選んでいますか?煌びやかな共用施設ありきからマンションのパッケージングに惹かれているだけではありませんか?今一度立ち返ってよく考えたいです。

決して大規模物件だからイメージの良さだけで部屋を選ばないように、最低限の住環境の確保は念頭に部屋を選びましょう。部屋の明るさ、周辺環境から派生する住みやすさなど、住宅に関する基本はしっかり押さえ、その上で、充実した共用施設で生活に彩を加えてくれれば言うことなしですね(関連記事)。

最低限必要な施設、サービス

それでも、せっかくの大規模マンション、最低限の共用施設、サービスは欲しいですよね。

まず24時間有人管理やコンシェルジュサービス。共働き世代が増える中、仕事帰りが遅くなっても、時間に関係なく住まいのことを相談できる体制は助かります。

大規模マンションといえば、住む誇りにもなり、地域でのランドスケープ性、よそ様から「素敵なマンション!」と評価され、リセールバリューに貢献するランドスケープデザインです。吹き抜けの豪華なエントランスなどの豪華な造りは必須です。機能性では、車寄せが重宝すると思います。車をマンションに付けて荷物を住戸へ運んだり、人を下ろしたりする機会は多いです。車寄せがあるマンションと、無くて近隣が車を止めにくい立地に建つマンションでは雲泥の差です。

共用施設で言えば絶対欲しいのは2つ。まずキッズルーム。子育て支援的な意味合いからも子供ができると重宝するばかりか、マンション内でのママ友、コミュニティづくりにも一役買う貴重な空間になります。将来的には集会所や他のスペースへの転用もしやすいと思います。

つぎに、スタディルーム、ワークスペースですね。

数々の共用施設の中でも、結局誰にでも便利で頻度が高いのは、この2つかと思います。

シェアサイクルも便利です。基本、マンションは1住戸2台まで自転車置き場が割り当てられるので、子供が1人、2人できると大体自転車置き場が足りなくなります。また車離れが進む中、自転車需要は高まっており、シェアサイクルがマンション内にあることはとても時機に適ったサービスと言えます。

住戸設備で言えば、ディスポーザー(生ごみ処理機)は欲しいです。これはマンション全体での設備になります。後付けはできないため、できたらディスポーザー完備のマンションがおススメです。

他、自分自身にとって必要で、マンション界隈ににないサービス、それは駅から遠いマンションであればシャトルバスなど、を補うような共用施設を事前によく考えておく必要があると思います。

最後に

コスト面では大した負担にならないので、充実した楽しい共用施設サービスはあるに越したことはないです。楽しい生活を送れるでしょう。一戸建てにはないマンションの魅力になります。

ただし、自分にとって本当に必要なのか、マンションに隣接した公共や民間の施設で補てんできないかを確認したうえで、ひょっとしたら維持管理コストや使用料金などの負担、将来的な運営リスクが増えるほど必要ないかもしれません。必要が無ければ、他に小規模マンションなど選ぶ選択肢が増えるかもしれません。

なにより、大規模マンションの豊かな共用施設のイメージに惹かれるより前に、住まいの基本となる部屋での暮らし心地を重視してマンション選びをする事が一番大事です。これだけは基本にマンション選びをして欲しいです。

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