分譲マンションで主流になってきた「対面型」キッチンですが、少しでも経済的な負担を抑えて購入しようと考えている私たち庶民にとって、気をつけるべき視点があります。

対面型・アイランド型キッチンは、なぜ人気なのか

結婚して住み始めた賃貸マンションは、壁付き型のキッチンでした。

しばらくして、ファミリータイプの新築マンションへ住み替え、主流の対面型キッチンになったわけですが、

購入を検討していた時は、「人気の対面型キッチン!」と打たれた広告を見て、『対面型キッチン素敵だね!』と手放しで思っていました。分譲マンションを検討されている方は、私たち夫婦と同じように考えている人が多いと思います。

では何故、現代のマンション(特に2LDKや3LDK)は、対面型キッチンが人気なのでしょうか。

それは、検討者側のイメージの良さと売主側の都合がマッチングして、売主側が『人気の!』と打ち出すようになったからです。

そもそも、人気があっても無くても、現代の分譲マンションでは、対面型のキッチン以外、ほとんど選べないのが実情です。

本来、自由な間取り設計ができたり、広い空間を確保できれば、LDとキッチンが異なる空間になる独立型(クローズド)のキッチンでもメリットが多く、使い勝手も良いはずです(関連記事)。

しかしながら、現代のマンションの多くは、様々な制約の元、田の字型の間取りに集約されるようになりました(関連記事)。

住戸幅が6m前後の狭いスパンが多く、必然と細長い廊下のデッドスペースが生じることで空間の使用方法が制限されてしまうこと

コスト高騰の煽りで専有面積が60㎡台の3LDKが多くなったこと

限られた空間の中で、対面型オープンキッチンのLDKが、空間の広がりや生活の便利さを訴求できる、ベターな間取りとなった訳です。

そうした売主側の都合と、対面型キッチンの開放感や利便性などから検討者の人気がマッチし、キッチンの主流になったのだと考えています。

また、一つの「島」のように独立した形のアイランドキッチンですが、キッチンを囲んで動線が増えますので、生活が楽しく便利になり、こちらも人気が高い仕様になります。

ただし、マンションの一般的な間取りだと、スペース上、設置が難しく、一部の高級物件や空間を広々取れるワイドプラン型の間取りに採用されることがほとんどです。

対面型やアイランド型キッチンの良さを活かせる条件とは?

売主の都合と消費者の需要とマッチしたかのように思えるこの対面型キッチンですが、このキッチンのメリットを活かす間取り上の条件が2つあります。

1つめは、対面するLDに、最低限生活できる広さを確保すること

2つめは、LDK一体の開放感を活かすキッチン仕様であること

です。

最低限デッドスペースが無いLD10畳を確保する

マンションの空間は、日々、食事や団らんで多くの時間を費やす、LD空間の居住性が重要だと考えています。その中でも今回は広さの問題。

居住性における「広さの問題」とは以下を示します。

あくまでもファミリー層の一般的な生活スタイルを指しますが、以下の家具を配置して、食事やリビングで、ゆったり団らんができること

ダイニングテーブル130cm
ソファ180cm
ローテーブル100cm
テレビボード150cm

以上のようなサイズ感の家具を配置しても、窮屈さを感じないレベルで10畳としています(関連記事)。

欲を言えば、もっと大きい家具を選びたいですし、更に余裕が生まれるデッドスペース無しの12畳程は欲しいところですが、贅沢は言えません。ファミリー層にとってのLDの広さは「デッドスペース無しで最低限10畳」を必要とします。最低限です。

以下は、デッドスペースの無いLD約10畳を擁する間取りです。キッチンは独立型です。

およそですが、家具を配置すると以下のようなイメージになります。

一方、私たちがよく目の当たりにする田の字型の間取りで対面型のキッチンを採用するとどうでしょうか。

LD約10畳の表記の間取り。

対面キッチンにしたことで、キッチン横の廊下部分のデッドスペースまで10畳に含まれているので、実際の生活有効畳数は約8.5畳ほどになり、十分な家具を置けない空間になってしまいます。

対面キッチンを採用し、生活有効畳数を10畳確保するためには、LD表記11.5畳~12畳ほどが必要になります。

11.5畳から赤いデッドスペース部分を除くと、生活有効スペースは約10畳。

住戸の専有面積としては、やはり70㎡以上が必要でしょう。

ただし、同じ畳数規模でも以下のような場合。

この間取りでは、デッドスペースである廊下部分が非常に長く、11.6畳の表記でも、赤いデッドスペース3畳ほどを除いた、生活に使用できる畳数は約8.5畳になります。こちらも十分な家具を置けないでしょう。

LDの畳数表記がどこを指すのか、気をつけて間取り図を吟味しましょう。

最後に、アイランドキッチンについて。

LDKで16.7畳の表記。一見十分な広さを感じます。しかしながら、アイランドにすれば、両脇の動線部分がデッドスペースになり、実際に家具を置けるスペースは以下となります。

キッチンと両脇のデッドスペースである動線部分で、約7畳近くを占め、結果LD部分が10畳ちょっとに。これだけの空間があっても、家具を置いて生活できるLD面積としてはギリギリなのです。もちろんオープンキッチンにする事で空間自体は広々とします。

一般的な間取りでアイランドキッチンは採用されず、贅沢な空間で使用される理由です。

水回りのパイプスペース部分も決まっているマンションが多いことから、キッチンの位置を変更するリフォームが難しく、一度このような部屋を購入すれば、間取り変更が難しいので注意が必要です。

以上は、LDに必要な家具を配置して、家族が快適に暮らすことができるか、対面型、アイランド型キッチンを含んだ間取り上の見るべきポイントでした。

LDK一体の開放感を活かすキッチン仕様

対面型にした理由の1つは、10〜15畳程度の限られた空間でも、LDと一体化させ空間に開放感を持たせるためです。

そのためのキッチンの仕様として、空間を分断させてしまうLDとキッチンを仕切る壁や吊り戸棚は、できる限り除去してオープンにしたいです。

キッチン上部の壁や吊り戸棚を、できるだけ無くしてオープンにすれば、デッドスペースである廊下部分を含んだLDKが一体空間となり開放感が出ます。

吊り戸棚をリフォームで外すことができますし、大きな住み心地にまで影響するものでは無いですが、できれば事前に、吊り戸棚が無くてもキッチンの収納が十分であるかを含め、この仕様までしっかり見ておきましょう。

もちろん、20畳もあるリビングでしたら、その仕様はどちらでも開放感に影響は少ないです。あくまで、一般的に私たち庶民が選ぶ10畳~15畳前後のLDKで、少しでも空間に広がりを持たせるための注意点です。

最後に

予算上、満足できるLDKの面積に満たない専有面積の住戸を選ぶ人もいるでしょう。ただし、上記のような注意点は理解しておいていただきたいですし、同じマンション内の同規模の住戸でも、間取りタイプによって空間設計が異なりますので、よく吟味して選びたいですね。

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