初めての住み替え、特に新築マンションへの買い替えを検討している人は、新しい部屋を探す前に、ぜひ確認しておいて欲しい事があります。
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新築マンションへの買い替えが難しい理由

住み替えのタイミング、予算設定、売り先行、買い先行による売買の進め方については、前回の記事で説明しました(参考記事)。

しかしながら、「買い先行での新築への買い替え」については一筋縄ではいきません。

 

結論
買い先行による新築マンションへの買い替えが難しいたった1つの要因は、新築マンションのデベロッパーが、独自の分譲スケジュール、販売姿勢をとっているため、新旧住宅ローンにおける決済の調整が難しい事にあります。

 

新たな住まいを購入するためには、住まいを売却し、返済中のローンの抵当権を抹消してローンの与信(※返済比率)を戻した上で、新たな住宅ローンの借り入れを起こす必要がありますが、デベロッパーの分譲スケジュールの中で、タイミング良く売買の手順を進めることが難しいのです。

※与信枠(返済比率)は年収の30~35%が一般的ですが、年収によって異なります
※夫婦ペアローンではなく、単独で借り入れることを前提としています

以下のような人は、自分の都合やタイミングでリスクも少なく、売却や購入を進められるはずです。

・ダブルローンにできる与信枠がある
・ダブルローンでも経済的に問題が無い
・現金で買い替え先を購入できる
・現住まいの残債が無い
・残債を売却前に一括返済できる
・仮住まいする労力を厭わない

多くの住宅ローン残債を抱えた上で、新築マンションへ買い替えるためには、売買活動をどのように進めていけば良いのでしょうか。

「買い先行」で新旧住宅ローンを決済させるためには 

僕は過去4回の買い替え活動において、いずれも「買い先行」での売買活動をしてきました。欲しいマンションが決まってから買い替えの手続きに移るケースが多かったからです。

まず、大事な前提。新しいマンションの住宅ローンの借り入れ決済をする際に、返済中の住宅ローンの残債を0にできる目処があるかを押えておきましょう。

以下は、新築マンションの分譲スケジュール、一例です。

条件付きダブルローンでの決済

新築マンションのデベロッパー(以下、新築デベ)は、販売計画、顧客囲い込みのため、基本的に「第○期」分譲スケジュールを持っています。マンションを買い替える際は、契約日までに住宅ローンの審査を通す必要がありますが、そのためには、既に与信枠を使っているため、現住まいのローンの残債を返済しなければなりません。

上記のスケジュールを見ても、買い先行の場合、抵当権の抹消をしてから新築マンションを契約することが現実的でないことがわかると思います。そこで買い替えの前提となるのが、現住まいにおけるローンの抵当権抹消前に「条件付きダブルローン」として新規融資決済してくれる銀行からの借り入れです。

この場合、こちらの現住まいがいつ売れるか、新築デベにとっては問題になりません。もちろん、新築を引き渡す前にこちらが売却できて、ダブルローンにならずに住み替えできることを気持ちでは祈ってくれるでしょうが、新築デベの分譲事業には関係が無いことです。基本、買主側の売却都合で、販売スケジュールを動かすことはしてくれません。自分たちが販売する住戸のローン審査が通れば良いだけですから、問題は、こちらの与信枠(返済比率)を超えて審査を通してくれる銀行の承認が契約時に必要になることだけです。ですから、「条件付きダブルローン」での決済が売買の条件になるのです。


竣工前モデルルームで購入する際は、契約後一時的なダブルローンでの買い替えが一般的

以下は、条件付きダブルローンを認めてくれる銀行と条件の違いについての一例です。

ソニー銀行
借入金利0.457%、売却する住まいの残債が、東京カンテイによる売却査定価格の90%以下であること、融資決済後、6ヶ月以内での売却のみで賃貸に出す事は不可という厳しめの条件です。

三菱UFJ銀行
借入金利0.525%、売却査定額が残債の120%以上になること、1年以内での売却が条件。

三井住友銀行
借入金利0.575%、売却査定価格が残債を上回っている事、どこの仲介会社の査定でもOK、売却でも賃貸でも可能という易しめの条件です。

きらぼし銀行
旧東京都民銀行、八千代銀行の流れをくみますが、以前から買い替え用ダブルローンの実績があります。条件によっては、売却が決まるまでの間、新規ローンの支払いを金利のみに留めてくれるので、Wローンの期間を避けることができます。これは買い替えのスキームとしては安心できて非常にありがたい制度です。金利は変動0.625%で若干高めですが、Wローンの期間中の垂れ流しの支払いがないと思えば、ハンデは無くなるかもしれません。この買い替え用ローンは、非常に使えると思います!

また、金利の条件は変動と大きく違いますが、「フラット35」は、現住まいを売却もしくは賃貸に出す予定で、ローン申込時に仲介・賃貸の媒介契約書を提出すれば、既存の返済比率に組み入れないため、Wローンが通りやすいです。(ただし既にフラットを利用していたら却下)。(2020年2月15日追記)→2020年4月より、賃貸予定は返済比率に組み入れる事と、売却条件の確認強化において制度改正をする旨が発信されました。昨今のフラット35不正事案を受けて、ついにという感じです。

条件付きダブルローンの注意点は、新規借り入れの場合と条件が異なる場合があることです(※三井住友銀行の変動金利プランは新規借り入れで0.475とありますが、ダブルローン前提の審査だと0.575になるようです)。現住まいを早期売却できなければ、新と旧のダブルローン期間が生じるリスクもありますので、数十万円の持ち出しは覚悟しておきましょう。

※上記は、2020年1月現在の融資条件であり、提携しているデベロッパーや確認時期によっても条件は異なりますので、詳細はご確認ください。

返済比率に関わらず新規借入条件で決済

上記、条件付きダブルローンと考え方は同じなのですが、売却査定額が残債の120%以上になるなど好条件が揃ったときに、銀行が売却前に新規借入と同じ条件で特例決済してくれる場合もあります。融資決済後は、一定期間内に現住まいを売却する事が条件となります。新規借入では金利面などの諸条件が最大優遇されるケースが多いので、こちらでの決済がベストですね。注意点も同じく、売買スケジュールが合わないときにダブルローンが発生するリスクです。

購入と売却同時で新旧住宅ローン決済

銀行と新築デベの交渉次第で、購入と引き渡しを同時で決済をしてくれるケースもあります。買い替えする買主にとって1番嬉しいのは、新規借入と同じ条件の銀行から、一定期間ダブルローンにもならずスムーズに住み替えることです。既に新築デベの物件が竣工直前や竣工後、また「先着順販売」など、場合によっては個別交渉ができます。こうした条件の時は、新築デベが早くマンションを捌きたいという力が働くので、買い替えが目的で部屋を探している顧客に対して、銀行との交渉の上、売却の仲介とも連携し、スムーズな住み替えを支援してくれやすいのです。具体的には、銀行の審査を通した上で、デベ側がこちらの売却スケジュールの進捗に応じて、引き渡し時期を伸ばすなど融通を利かせた対応をとってくれることになります。


竣工後のマンションは、条件交渉をする上で買主有利?

以上が、買い先行による新築マンションへの買い替えのシンプルな進め方です。ただし、銀行のHPを見ても一般的な記載はありません。ここは大事なポイントですが、『買主の属性や条件が良い場合やデベロッパーの事情によって、銀行が特別審査、対応をしてくれる』、裏技的な対応となります。諸条件は異なってくるでしょうから要確認です。

他に、以下のような条件がデベロッパー(銀行)から提示される場合があります。

買い取り保証による買い替え

一定期間の仲介契約の後、売却が決定しなければ、買い取り保証による売買を実行する契約です。仲介で売却できず買い取り保証だと、相場の70~80%という価格になるので、こちらにとって魅力的な買い替え方法とは言えません。期間は3ヶ月間が一般的です。

買い替え特約による決済

一定期間内で売却査定の下限価格でも売れなかった場合、売買契約を白紙に戻す買い替え特約(停止条件)。期間はほとんどが3ヶ月間でしょう。買主にとっては、万が一売却できなかった際に契約を破棄できるので安心ですが、住み替えは叶わないことになります。また、デベロッパーにとっては販売上不利だとする見方が多いですが、そうとも限りません。「ブランズタワー豊洲」で買い替え交渉をした際、買い替え顧客は3ヶ月間の買い替え特約で取引しているようでした。竣工が相当先なので、顧客の囲い込み、販売機会の喪失を防ぐ観点から、デベの好都合になることもあると思います。

一方で、残債を返済できそうもない場合の、買い先行による買い替えはできるのでしょうか。

買い替えローンによる決済

基本的には、残債を返済できる前提の元、買い替えを進めるべきだと思っていますが、売却しても残債を返済しきれない場合、残った残債を新住まいの住宅ローンと一緒にする「買い替えローン」を利用するという手段もあります。ただし、よほど積極的に住み替えをする理由が無ければ、買い替え自体考え直すべきかもしれません。

買い先行による、新築マンションへの買い替えの進め方は以上です。

買主の属性が芳しない、またデベとの相性が合わないなど、以上の進め方で対応できない場合は、買い先行で旧住宅ローンの抵当権抹消ができないのですから、「売り先行」での売買活動に切り替えるしかありません。

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他、買い替えに関しての注意点

他に、注意点をいくつか。

賃貸仮住まいによる買い替え

売り先行で発生しがちな、賃貸での一時的仮住まいですが、竣工が数年先の分譲マンションにおいても、特例の新規借入れ、条件付きダブルローンの審査を通して、新築デベ側での売買条件が特になければですが、仮住まい無しで数年後の引き渡しを待つことも可能です。

例えば、フラット35で借りられる場合は、申込時に現住まいを売却に出す「媒介契約書の提示」が必要であるものの、その後の確認等はないためか、どこのデベロッパーでも進めやすそうで、よく案内されました。

ただし、新築引き渡しと同時のローン融資決済日以降、期限付きの売却条件とするケースが多いので、ダブルローンになる事を防ぐために売却手順をしっかり段取らないといけません。また、新しい住宅ローンの実効金利の決定が数年後であること、数年後の売却手続きに入る際、マンション売買を巡る環境が悪化しているリスクも伴います。

このあたりの売買手順も、デベロッパーの販売手法や提携銀行によっても異なるため、よく確認することが必要です。

一方で、仮住まいするケースとしては、先述の通り、「ブランズタワー豊洲」の例が挙げられます。2019年当時、2021年の引き渡しでしたが、デベから3ヶ月以内売却での停止条件付き契約を提示されたため、購入を契約すれば仮住まいを余儀なくされます。

希望の条件で売却できないリスク

「買い先行」での買い替え、最大の懸念点は、売却する住まいが希望通りで売れないリスクです。条件付きダブルローンや、停止条件付き特約を組んだ中での売却は時間制限があるため、売却価格に影響する可能性が高く、相場より安値で売却しなければならない場合も想定されます。売却活動についても、新築デベ、仲介業者と密に連携を取りながら進めていきましょう(参考記事)。

特に、郊外や駅遠件など、売却が難しいとされる物件に住んでいる人は、「売り先行」での売買活動も視野に入れた方が良いかもしれません(前回記事参照)。

事前に営業さんに話を通しておく

当然、マンションギャラリー訪問時に、アンケートなどから『買い替えですね』とわかってもらえるのですが、営業さんも、こちらの属性から買い替えが充分可能な顧客であるか、その時点では把握できません。何度も通ったあげく欲しい部屋が見つかって話が煮詰まってきた時に、審査をした結果、「買い先行」による買い替えの選択肢が無いでは本当にがっかりしてしまいます。ある程度、前向きに検討するマンションであれば、事前に買い替えの相談なり交渉をしておいた方が賢明だと思います。

ここで、地団駄を踏まれてしまうと、欲しい新築マンションへの買い替えができないので、売買に経験豊富な営業さんに当たると良いのですが。

以上のように、多くの残債を抱えた住宅ローンを返済中の身として、新旧住宅ローンを決済させて住み替えを実現することはハードルが高いものです。デベロッパーの販売都合、こちらの属性や内容、銀行の審査、売却する仲介などを一同に調整しなければならないためです。

先日あるモデルルームで、営業さんから「仮住まいやダブルローン無く、よく何度も新築マンションを買い替えてきましたね」と驚かれた理由が、僕にもようやくわかりました。要は、購入したい部屋が竣工直前、決算前の物件だったり、僕が売却に出そうとしていた住まいの内容が良く、売却しても大きく残債を超える条件にできたりと、たまたま良い状況が続いていたのだと理解できました。

最後に

僕は、過去4回の買い替え活動において、良くも悪くもこのメカニズムを知らなかったおかげで何度か翻弄されました。一生懸命探して、欲しい部屋が見つかり契約寸前まで行ったのに、泣く泣く諦める経験もしました。新築マンションへの買い替えを考えている人は、以上の内容を理解した上で、デベロッパー選び、物件選び、部屋選びに進んで欲しいと思います。