東京都も先月末に自粛が解かれ、マンションの売出しが増えてきました。自粛期間中、4〜5月における東京江東5区の動向を振り返ります(関連記事:コロナショック前夜の状況について)

指標については、以下を前提としています。

・検索サイト「SUUMO」にて検索し集計
・駅徒歩10分、築10年以内、60㎡以上の住戸を対象
・物件の所在地は、江東5区(墨田、江東、葛飾、足立、江戸川)
※江東区の湾岸エリア(りんかい線、有楽町線、ゆりかもめ)は除外
・「売出数」は、2020年4月1日時点での売り出し住戸と、2020年4月1日~2020年5月31日に売り出された住戸の合計数です
・「成約数」は、レインズMarket Informationで確認できた住戸です
・複数の駅が徒歩10分以内のマンションについては、徒歩分数が近い駅を最寄とします
・1坪=3.305㎡として価格を算定

総評、江東5区、自粛期間中の動向について

結論から。

湾岸エリアを除く江東5区の4~5月度の成約については、およそですが、前年の50%程度でした。

相場が目立って下がるような売買活動は見られませんでしたが、数少ない成約物件では、売出し価格から100~200万円ほどの指し値で成約されているケースが目立ちました。

成約されたエリアは、一部に偏っています。

特に、このような停滞時期でも、買い手の触手が活発だった「錦糸町」が、ファミリー層のマンション市場でも人気ナンバー1エリアであることを再認識しました。

以下、詳細です。

自粛期間中の成約件数

期間中、新しい物件は中々更新されず、売出し物件は、みるみる減っていきました。仲介業者さんは活動を自粛され、このご時世で、売出しをやめた売主さんも多かったと思います。

自粛期間中に成約された物件数です。

4〜5月は、通常でも1〜3月より若干少ない月なので、何もなければ月あたり20~25件前後の成約は見込めたはずですから、平常時の50%前後だったと推察しました。

4〜5月に「新規」で売出した物件は38件でしたが、うち成約にまで至ったのは1件のみでした。同じ条件で、2〜3月の2ヶ月を見ると、75件の新規売出しに対し15件の成約がありました。

沿線別の成約数

成約23件の沿線別内訳です。複数路線をまたがる駅は、それぞれの路線で成約物件をカウントしていますので、全路線の成約数合計と、実際の成約件数は異なります。

路線によって成約数に偏りが見られます。

半蔵門線、都営新宿線、総武線の、「住吉」「錦糸町」「西大島」「大島」「船堀」で、23件のうち半数以上の13件を占めました。

高騰しきっていたコロナショック前夜に高値を付けていた、清澄白河、東陽町では、1件も成約が確認できず、直近で中古相場が上がっていた北千住も0、東武線沿線に至っては、全駅で成約0でした。

中でも、不動の人気ぶりを示したのが、錦糸町です。4月の新規売出しで成約まで至った1件は「オアシティ錦糸町」で、築10年目、70㎡6,450万円前後(分譲時5,300万円前後)での成約。このマンションは、錦糸町の北口、繁華街のちょうど外れにさしかかる、これ以上はない好立地で、今では錦糸町で希少の築浅、ファミリータイプ70㎡住戸でした。

他にも、住環境にハンデがある、駅徒歩8分「ヴィークコート錦糸町」の65㎡小型3LDKが、こちらも売出しからほぼ満額の6,450万円前後(坪単価320万円以上)と、竣工から1年あまりで、分譲価格から500万円以上の高値で成約されました。この価格では絶対に売れないと思っていたので、錦糸町の人気ぶりを過小評価していました。

長い間残っていた「ブランズ錦糸町」の2部屋も決まり、錦糸町は計4部屋の成約。

路線では、都営新宿線が元気でしたね。

住吉、西大島、大島、船堀で、合計9物件が成約されました。

船堀で成約された2件ともに、駅徒歩3分の小規模マンションで、坪単価230万円前後、グロスで5,000万円ちょっとでした。同じく徒歩3分の「ザ・パークハウス船堀」が坪単価280~290万円、グロスで6,000万円前後で売り出されていたため、かなり割安に映ったのではないでしょうか。

他の路線における成約数は0か1と低調でした。

個別マンション相場の変化

コロナ前の相場と比較できる物件を追ってみました。

「ザ・ガーデンズ西葛西」は、もともと在庫が多かったので、おそらく足下を見られ、それまでの成約事例より、坪単価10~20万円ほど落とした印象があります。

他の成約については、成約年月や住戸条件を加味すれば、相場の変動はありませんでした。

もともと供給過多で成約率が悪かったエリアは、今後、相場を落とす可能性がありそうです。

少なくとも、現況を踏まえる中、私が西葛西でマンションを短期間で売るとすれば、10件近く売り出されている「ザ・ガーデンズ」より若干安く売り出しますし、逆に買う立場であれば、少しでも条件が良く、「気持ち」グロスで安い部屋をじっくり物色します。買い手から引く手あまたではないので値引きも要求すると思います。

江東5区のマンション相場、今後の底堅いエリアは?

今後、経済情勢が不透明な中でも、現状の相場を維持していきそうな地域として、江東5区では以下のエリアを推しています。

下がりそうもない鉄板エリア

錦糸町、押上、門前仲町

都心に近く交通や生活に便利で話題に事欠かない楽しい街。ファミリー層にも人気があるにもかかわらず、70㎡規模の築浅、新築が極端に少なく、大きく需要が上回っている事から、今後も価格は維持し続けそうです。

このコロナ禍の新規売出しでも満額に近い価格で即成約に至った錦糸町、加えて、物件が出さえすれば、コロナショック前の動向を踏まえ、押上、門前仲町も同様と考えています。

今後、盛り上がりそうなエリア

潮見、金町、小岩、亀戸、船堀

将来性がありながら相対的に相場は低く、今より下がることは考えにくいエリアです。

潮見
都心、湾岸エリアに隣接し、駅前にはオリンピックに向けてホテルが開業を控え、伸びる要素はありますが、現状では低位安定で成約されています。界隈に築浅のファミリータイプのマンションが2棟しか無く、新築マンションが期待されます。

金町
最大手4社による再開発が行われている中で発展が著しく、ファミリーの街へと変貌を遂げつつあります。「シティテラス金町」の販売が好調で、直近で価格を上げていることからも、現状の相場が安いと消費者は判断しています。

小岩
こちらも、今後、駅前大規模開発の詳細発表次第で大きく飛躍しそうなエリアです。この期間における成約1件は、「オークプレイス小岩」で、グロスで6,000万円前後、分譲後1年で500万円近く上昇しました。

亀戸
西大島の北側、亀戸に程近い「ザ・ミッドランドアベニュー」がコロナショック前と同様、安定して2戸が成約されていたことから、「プラウドタワー亀戸クロス」が、第二期以降の販売も好調を維持すれば、引き続き相場の底堅さがあると思われます。

船堀
江戸川区役所移転が予定されている船堀は、急行停車駅で交通、生活に便利で環境も良く、名実ともに江戸川区の中心になります。行政機能だけでなく、「タワーホール船堀」や区役所予定地が一体となって、エンタメ性を発揮できるような集積地になれば、現状、準大手や中小デベの徒歩5分前後の築浅が、上記取引事例のように比較的低位なので、今後、堅調に推移していく可能性があります。

他、駅前に複合開発のマンションが予定されている、千住大橋、立石、平井、瑞江あたりは、人気エリア、マンションが飽和になってきたエリアの受け皿として、注目したい地域です。

広い部屋を選びやすい江東5区のエリアは?

コロナショックの影響で在宅勤務が広がり、広い住戸の需要が高まるのではないかと言われています。

その視点から、江東5区では、以下のエリアをおすすめします。

墨田区立花、小村井駅最寄り
江戸川区清新町、西葛西駅最寄り

共通して言える事は、都心部から直線距離で近く、いざとなれば、都心部でのリアルなコミュニケーションも維持しながら、自然豊かな環境で、子育て、在宅勤務もストレス無く行えそうな場所。公共の交通が不便な立地なので、マンション相場が安く、大型住戸が庶民にも手が届きやすい事です。

2020年6月14日現在、小村井では、築2014年の「ソライエ・プレミアムテラス」で、75㎡の大型3LDK、88㎡の4LDKが、4,000万円台で売り出されています(関連記事)。

清新町では、新築分譲中の「ジオ西葛西清新町」で、77㎡の4LDKが5,500万円前後で売出し中です(関連記事)。

最後に

コロナショック前のマンションは高すぎました。私たち庶民に手が届きそうな良質なマンションが手に入る価格になることを願って、これからも市場を注視していきたいと思います。

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