経験上、欲しい新築マンションを見つけても、買い替えをスムーズ行い、新居へ引っ越すことが高いハードルでした。何度も苦労し欲しい物件を逃したりもしました。

スムーズな買い替えとは?

スムーズな買い替えは、新旧住まいの売買決済を同時に進め、仮住まいの負担なく退去・入居を同時に行う事とします。

まず、買い替えできる条件を見極める

『欲しい新築マンションができたので、今所有しているマンションを売却して住み替えたい!』と気持ちを煽る前に、基本的な住み替えの進め方、特に、買い替えられる条件について押えておくことが大前提です(関連記事)。

買い替えがスムーズにいかない理由

新築マンションへの買い替えがスムーズに進まない理由。結論。

買い替えの大きなハードルは、現住まいを売却しローンを返済、与信(返済比率)を戻した上で、新たな住まいの住宅ローンを借り入れることに尽きるのですが、では何故、新築マンションへのスムーズな買い替え・住み替えが難しいのでしょうか。

その理由はひとえに、新築売主が、独自の販売スケジュールのもと、販売破綻のリスクを避けるために、販売契約(申し込み・ローン手続き)を速やかに進めるからです。こちらの買い替え事情は関係ありません。特にモデルルームでの竣工前販売。

スムーズな住み替えは経済力のみが実現する

速やかな契約申し込みをクリアして住まいを売却し、ストレス無く住み替えできるのは、極端な話、買主に経済力がある場合のみです。

つまり、住み替えに跨がる2部屋を、経済的な制限無く同時に所有できる人は、欲しい部屋を見つけたら、売主の販売スケジュールに則って、仮住まいなど面倒な手続きを踏まえなくても円滑な買い替え・住み替えを進めることができます。例えば、以下のような境遇の人。

・複数物件を所有できる与信枠がある
・Wローンにしても経済的問題が無い
・現金で買い替え先を購入できる
・現住まいの残債が無い
・残債を売却前に一括返済できる

ある程度の経済力がある人は、問題なく住み替えできます!

この記事の話はここで終わりです。

しかしながら、私たち庶民は、それほどの財力を持ち合わせておらず、現在借り入れている住宅ローンを完済した上で、新たな住まいローンを借りて住み替えを進める必要があります。

買い替え・住み替えを円滑に進めるためには

では、どのように買い替えのハードルをクリアしていけば良いでしょうか。

売却益を購入に充てたいためローン審査が通らない

住宅ローンの審査を通す際に、現住まいの売却益を含めた借入金額で審査を通すことはできません。

「7,000万円の物件を購入する際、1,000万円以上はゆうに売却益が出るため、将来入金になるはずの1,000万円を充当し、6,000万円を借り入れしたい(わかりやすくするため諸費用などは除いています)」

当たり前ですが、売却益は未来の不確定要素のため、借り入れる際は7,000万円の審査を通す必要があります。

つまり、売却益を充てれば予算上はクリアできるのですが、充てる金額(想定)が大きいと、除いた金額のローン審査が通らないケースが出てきます。

主な対処法は以下。

・有利になる追加エビデンスを提出し交渉する


<審査が通らなかった場合>
・将来手に入るはずの売却益分の現金を前借りして工面する
・つなぎ融資を利用する
・売却から進め、売却益を得てから購入の検討に入る

まず、明らかに大きな売却益が出る事を証明できる残債確認や売却査定書、保有資産などのエビデンスを追加提出して上記7,000万円のローン審査の交渉を続けてみましょう。ローンの審査さえ通れば、あとで1,000万円売却益分を除いて6,000万円で融資実行してもらうか、実行後に繰り上げ返済すれば良いだけのこと。

審査が通らなかった場合は、借入金を(6,000万円に)減らして審査を通し、その分1,000万円現金を、親などから前借りする。前借りできる当てが無ければ「つなぎ融資」を利用する手も。金利は高いですが、売却益が入るまで短期間の我慢。ただし原資となる売却益を間違いなく見込める場合です。

借りるのも無理なら、6,000万円の借入で済ませるため、売却を先に実行して売却益を先に手に入れるしかありません。売却先行なら資金計画も安全です。

現住まいと同じ銀行ローンは審査がおりない

現住まいで借り入れている金融機関の条件が良いと、次の買い替え先も同じローンで借りたいと思うもの。しかしそれができないのです。既にその金融機関で与信を多く使い、住まいの抵当権を設定しているのですから、それを抹消しない限り新たに審査をしてくれません。

主な対処法は以下。

・事前に他社のローンの条件を吟味して探しておく
・現在の金融機関が良ければ、売却し抵当権を抹消してからゼロベースから審査を通す

現実的には、他の銀行で探した方が良いですね。私は今までの買い替え時、全て既存借入の銀行で再度の借入が難しかったため、異なる銀行に鞍替えしてきました。

希望の銀行ローンが通らない

借入金額も仮審査の上、せっかく条件の良いローンを探しておいたのに、上記と同じように、新規借入の条件で受けてくれない金融機関などがありますので注意が必要です。若干条件を落としたローンでも買い替えるくらいの余裕をもっておかないと、後で打ちひしがれます。

仮住まいが発生してしまう

竣工・入居が相当先の新築は、売主の販売スケジュールに沿って、数ヶ月で正式契約、借入申し込みをしなければならなくなります(※融資実行は入居時~)。例えば、与信を切り離して複数の部屋を持てない(与信枠を使い切っている)場合、現住まいを数ヶ月以内に売却する条件で新たなローン審査を通してくれるなどの対応になりがちで、そうしたときに、入居まで仮住まいが発生してしまいます。

主な対処法は以下。

・条件付き新規借入決済を交渉する
・Wローンを許可してくれる金融機関から借り入れる
・銀行ローン→フラット35に切り替えて審査する

売却査定額が残債を大きく上回るなど好条件が揃ったときに、売却前でも、銀行が新規借入と同じ条件(残債0として)融資決済してくれる場合があります。現住まいを売却に出さず、仮住まい無しで数年後の引き渡しを待つことが可能です。入居、融資決済後は、一定期間内に現住まいの売却(後売り)を求められます。

以下は一例です(2020年3月時点で私が把握していた情報です)。

ソニー銀行
借入金利0.457%、売却する住まいの残債が、東京カンテイによる売却査定価格の90%以下であること、融資決済後、6ヶ月以内での売却のみで賃貸に出す事は不可。

三菱UFJ銀行
借入金利0.525%、売却査定額が残債の120%以上になること、1年以内での売却が条件。

三井住友銀行
借入金利0.575%、売却査定価格が残債を上回っている事、どこの仲介会社の査定でもOK、売却でも賃貸でも可能という易しめの条件です。

当時、上記の条件は、金利面で言えば、いずれも通常の新規借入より0.05~0.1%ほど高いものでした。

フラット35
条件は変わりますが、住宅金融支援機構が取り扱う「フラット35」は、現住まいを売却に出す予定であれば(売却仲介の媒介契約書を提出すれば)、新規借入を既存の返済比率に組み入れないため、Wローンが通りやすいです。どこのデベロッパーでも進めやすそうで、以前はよく案内されました(ただし既にフラットを利用していたら駄目)。昨今のフラット35不正事案を受けて、2020年4月より、賃貸予定は返済比率に組み入れる事と、売却条件の確認強化において制度改正をする旨が発信されました。

以上ですが、仮住まいをせず、1~2年後に売買の実行をする際、環境が悪化し、住み替えの条件が厳しくなってしまうケースもあります。以下注意点。

・新しい住宅ローンの実効金利の決定が入居時であるため金利が上がるリスク
・入居付近にマンション売却を巡る環境が悪化しているリスク

・現住まいを円滑に売却できなければ、新旧ダブルローン期間が生じるリスク

竣工前モデルルームで購入する際は、契約後一時的なダブルローンでの買い替えが得策

Wローンになるリスク

新旧ローンが同時に走ってしまうと、月々二重の支払いが発生し、経済的な負担ばかりで無く、精神的な不安要素にもなります。

主な対処法は以下。

・同時決済を交渉する
・W支払いにならないローンを利用する
・売却を早期に(同時に)進める

銀行と売主の交渉次第で、購入と引き渡しを同時で決済をしてくれるケースがあります。既に物件が竣工直前や竣工後、また「先着順販売」など、売主が早くマンションを捌きたい力が働く場合、買い替えが目的で部屋を探している顧客に対して、金融機関や売却の仲介とも連携し、スムーズな住み替えを支援してくれやすいです。具体的には、銀行の審査を通した上で、売主側がこちらの売却スケジュールの進捗に応じて、引き渡し時期を伸ばすなど融通を利かせた対応をとってくれることになります。当然ですが、「パークタワー勝どき」など人気物件はこちらの事情など踏まえてくれませんので、交渉は無駄です。

竣工後のマンションは、条件交渉をする上で買主有利?

Wローン期間の対策をとってくれる、都合の良いローンもあります。

きらぼし銀行
旧東京都民銀行、八千代銀行の流れをくみますが、以前から買い替え用ダブルローンの実績があります。売却が決まるまでの間、新規ローンの支払いを金利のみに留めてくれるので、月々におけるWローンの支払いを避けることができます。金利は変動0.625%で若干高めですが(※2020年3月時点)、Wローンの期間中の垂れ流しの支払いがないのは安心です!

Wローンにならない一番シンプルな方法は、現住まいの決済を早く済ませて、完済してしまうことです。売却を早期に(同時に)進めて二重ローンにしないよう段取ることです。ただし、先に売却が決まれば、仮住まいを余儀なくされるでしょう。

※上記記載してきた各金融機関の条件は、2020年3月時点の融資条件であり、提携しているデベロッパーや確認時期によっても条件は異なりますので、詳細はご確認ください(関連記事)。

手付金10%が支払えない

竣工前タワーマンションなどの人気物件、「パークタワー勝どき・・・」など、手付金の10%が1,000万円近くなるような場合は、支払うのが容易ではありません。どこかで前借りするか(数年先分も!)売り先行で売却益を事前に入手するしかないですね。ただし、ある程度の人気マンションでも5%くらいまでは十分交渉できますし、私は4回購入して100万円以上支払ったことがありません。『本気で購入したいけど、本気で預貯金がない』ことを説明して交渉しましょう。

その他の買い替えの進め方

買い替え特約による決済

売主から、現住まい数ヶ月以内売却での停止条件付き契約を提示されるケースもあります。

停止条件を付けられると、3ヶ月間で売り切らないといけないため、現住まいの条件が良くないと、安く売らなければならないリスクが生じます。

もし1~2年後に竣工する新築の場合、仮住まいを避けるためには、こちらの売却活動も、1年~2年後の引き渡し条件を付けることができます。ただし、数年後の相場は誰にも予想できずリスクがあり、当然築年数も経過してしまうため、現在の相場より低く売出して顧客を惹く必要があります。

買い取り保証による買い替え

一定期間の仲介契約の後、現住まいの売却が決定しなければ、買い取り保証によって売却を実行する契約です。仲介で売却できず買い取り保証になると相場の70~80%になるので、こちらにとって魅力的な買い替え方法とは言えません。期間は3ヶ月間が一般的です。新たな買い取りサービスも出てきています。(関連記事)。

他、買い替え活動における注意点!

事前に営業さんに話を通しておく

マンションギャラリー訪問時に、アンケートなどから『買い替えですね』とわかってもらえるのですが、営業さんも、こちらの属性から買い替えが充分可能な顧客であるかは、エビデンスの提示や事前審査をしないと把握できません。何度も通ったあげく欲しい部屋が見つかった時に、審査をした結果、買い替えの選択肢が無いでは本当にがっかりしてしまいます。ある程度、前向きに検討するマンションであれば、事前に買い替えの相談なり交渉をしておいた方が賢明だと思います。できれば、「売却査定書」「ローン返済予定表」は用意して臨みたいです。

面倒くさがる担当者に根負けしない

面倒な買い替え需要を取り込まなくても十分に販売が進んでいる場合や、売買に経験が少ない営業さんに当たってしまった場合、ここで地団駄を踏まれてしまうと、欲しい新築マンションへの買い替えができません。こちらから丁寧に提案したり、購入する意思を上席に伝え担当者を替わってもらうなど諦めずに交渉を続けましょう。優先すべきは、気の合わない担当者に気後れしたり背を向けてしまうことではなく、本当に欲しい物件を手に入れるために行動することです。

優柔不断な対応で関係者に迷惑をかけない

買い替えを進めるに当たっては、売主、仲介業者、現住まいを購入してくれる人、銀行ローン担当者など、様々な人が介在します。中途半端な気持ちで「買うのをやめた」「売るのをやめた」では、関係者に多大な迷惑をかけてしまいます。売買活動は数ヶ月間の長いタームです。「あちらの物件の方が良かったかも」「予算が高すぎたかも」と迷うことは誰でにもあるでしょう。決断する前に、後悔しないマンション選びをしっかり考えてください(関連記事)。

売主、金融機関、個別属性によって事情は様々

以上、欲しくなった新築マンションへスムーズに買い替える主な進め方を見てきましたが、上記のような対応は、金融機関の公式HPを見ても一般的な記載は無く、『買主の属性など売買条件が良い場合、デベロッパーの事情によって、銀行が特別審査、対応をしてくれる』、裏技的な対応が多いのが実態です。諸条件は異なってくるので要確認です。

何が住み替えに大事か優先順位を!

買い替えにおいて、すべてが上手く行くことはありえません。これだけは譲らない優先順位を持ちましょう。私の反省点としては、仮住まいだけは避ける条件を模索しすぎて、本当に欲しい物件を買い逃してしまったこともありました。今思えば、一時的な仮住まいより、本当に欲しかった物件を手に入れるべきだったと思っています。

最後に

欲しい新築マンションができても、多額の住宅ローンを返済中の身として、新旧住宅ローンを決済させて住み替えを実現することはハードルが高いのが実情です。一方で、売主が「何としても売りたい!」力が働いていると、こちらが何も考えずとも「売買の進め方はすべてお任せください!」と、あれよあれよ任せきりで進んでしまうこともあり、それぞれ売買のケースによっても事情は異なります。

私は、過去数度の買い替え活動において、このメカニズムを知らなかったおかげで何度も翻弄されました。一生懸命探して、欲しい部屋が見つかり契約寸前まで行ったのに、泣く泣く諦める経験もしました。新築マンションへの買い替えを考えている人は、以上の内容を理解した上で、部屋選びに進んでほしいです。

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